Vehicle Identification Number
アメリカには Social Security Number (SSN) というものがあることは日本でも良く知られている。これは本来年金番号である。日本では年金記録の紛失や不整合が大問題になっているが、生まれたらすぐに年金番号を付与し、成人した後官公庁に勤めて共済に入ろうが、一旦退職して国民年金加入期間があろうが、民間に再就職して今度は厚生年金に入ろうが、同一のこの番号を用いて管理すればこんな問題は起きなかったはずなのにと思う。
が、SSNは国民総背番号制の背番号としても機能している。年金の管理だけではなく、健康保険、税金(所得税・住民税)、クレジットヒストリーや自動車免許(=運転履歴)、犯罪歴その他、個人を特定する必要のある全ての記録はこのSSNに紐づいているといって良い。日本はこれを嫌ったのだろうか。
さてアメリカは自動車についても「総背番号制」を敷いていることは日本ではあまり知られていない。Vehicle Identification Number (VIN) というものがそれだ。実はこのVIN、アメリカだけでなくEUでも全く同一のシステムが用いられているらしい。17桁の数字とアルファベットで構成されているコードで、全世界(と言ってもアメリカとEU)で車を特定できるコードである。言い方を変えると、ウチのスバルレガシーは、世界で唯一無二の VIN が付与されている。
そして、売買や車の整備などは全てVINを用いて記録され、データベース化されている。例えば CARFAX などで、VIN を入力の上一定の料金を支払うと、その車が生産されてからの履歴がかなり分かる。例えばウチのレガシーは 1998年式ということになっているのだが、1997年10月15日にワシントン州で自家用として初度登録がなされている。その後 20,220 マイル、25,770 マイル、29,585 マイル、58,593 マイルにて各種サービスを受けている。その後所有者がフロリダに引っ越したらしく、2003年にフロリダに登録が移っている。2006年3月22日には次のオーナーに所有権が移り、バージニアにて登録がなされている。このときのマイルからして、筆者が購入したディーラーが買ったものと推定される。これらは当該レガシーを 2006年に筆者が購入する直前に購入した CARFAX データなので、今改めて CARFAX をとれば、最近のサービス記録なども加わっているに違いない。
そして、これらデータの改竄がないことを前提にすれば、盗難車や廃棄車の再利用であるかないかを見抜くことが出来る。
日本では不動産は所有権の証拠として登記の対象となるが、アメリカでは自動車も登記の対象となる。Title がそれにあたり、この titleを用いて売買をするが、この title も VIN を用いてクルマを特定している。
ちなみに 17桁の構成は
1~3桁: World Manufacturer Identifier (WMI code)
4~8桁: WMI内の、車種コード
9桁: チェックデジット
10桁: 生産年
11桁: 生産工場コード
12~17桁: 連番
となっている。ウチのレガシーを例に、上から順に多少詳しくみて見よう。
先ず日本のスバルの WMI コードは JF1 であるが、次のような構成になっている。1~2桁目で国を表し、2~3桁目でメーカーを表す。ちょっと複雑だが、例えば次のようだ。
日本は JA~J0 で始まるコードを用いることになっている。だから日本国内のメーカーは JAX とか JZP などとなる(トヨタはJTN)。なお、同じスバルでも米国スバル製だとアメリカのコードになる。アメリカは 1A~10、4A~40、5A~50 で始まるコードと決められている。ウチのスバルも同僚のスバルも 4S3 である。なおこの WMI コードは、米国にある Society of Automotive Engineers (SAE) によって決められている。
さて次の 5桁の車種コードだが、これはメーカー内で自由に決められるようだ。スバルの場合、次のようになっている。
| 4桁目:Line | 5桁目:Body | 6桁目 Engine & Drive | |||
| A | Alcyone / XT / XT6 | C | Impreza sedan | 2 | 1.8L FWD |
| B | Legacy / Baja | D | Legacy sedan | 3 | 3.3L AWD |
| C | Alcyone SVX | F | Impreza wagon | 4 | 2.2L AWD |
| G | Impreza | Forester wagon | 6 | 2.5L AWD | |
| S | Forester | G | Outback [Legacy] wagon | 6 | 2.5L AWD |
| K | Legacy wagon | 8 | 2.7L FWD | ||
| M | Impreza coupe | ||||
| T | Baja | ||||
| X | XT/SVX coupe | ||||
| 7桁目:Model | 8桁目:Restraints | ||
| 1 | base | 2 | automatic seat belt without air bags |
| 2 | Brighton |
5 | manual seat belt with driver and passenger air bags |
| 3 | L | 6 | manual seat belt with driver and passenger air bags and side air bags |
| 5 | LS / S | ||
| 6 | LSi | ||
| 7 | GT / RS | ||
| 8 | Outback / Sus | ||
| 9 | postal vehicle | ||
ウチのレガシーが BK675 となっているのもうなずける。
次の9桁目はチェックデジットだから、ほかの 16桁が決まれば自動的に算出される数字で当然計算ロジックがあるが、ここでは深入りしない。
10桁目の生産年は、次のようになっている。
| A | 1980 | L | 1990 | Y | 2000 | A | 2010 |
| B | 1981 | M | 1991 | 1 | 2001 | B | 2011 |
| C | 1982 | N | 1992 | 2 | 2002 | C | 2012 |
| D | 1983 | P | 1993 | 3 | 2003 | D | 2013 |
| E | 1984 | R | 1994 | 4 | 2004 | E | 2014 |
| F | 1985 | S | 1995 | 5 | 2005 | F | 2015 |
| G | 1986 | T | 1996 | 6 | 2006 | G | 2016 |
| H | 1987 | V | 1997 | 7 | 2007 | H | 2017 |
| J | 1988 | W | 1998 | 8 | 2008 | J | 2018 |
| K | 1989 | X | 1999 | 9 | 2009 | K | 2019 |
1桁で 1980年から 2009年までの 30年分をカバーする。上で唯一無二と書いたが、2010年からは、論理的には 30年前と同一の VIN を持つ車輌が存在しうることになるが、その点はどうするのだろうか・・・?
11桁目の生産工場コードは、スバルの場合なら次のようになっている。
| C | Japan - Fuji Heavy Industries | FWD | 4EAT |
| G | Japan - Fuji Heavy Industries | AWD | MT5 5/R |
| H | Japan - Fuji Heavy Industries | AWD | 4EAT |
| 6 | Indiana - Subaru-Isuzu of America | AWD | MT5 5/R |
| 7 | Indiana - Subaru-Isuzu of America | AWD | 4EAT |
| 8 | Indiana - Subaru-Isuzu of America | AWD | 4EAT (Postal) |
なるほどウチのは Indiana のスバルアメリカ製なわけだ。もっともこれは冒頭の 4S3 からも想像がつく。
VIN は、上 11桁のうち 9桁目を除く 10桁で、そのクルマの主要な要素をすべて記載している。アメリカでは半ば公的な中古車の相場表(Blue Book)が毎年発行されているが、それもこの VIN を用いて記載されている。1998年のレガシーワゴン 2.5Lの GT、5速 MT という風にも書くが、BK675 で見る方が確実で、合理的でもある。先ほど本屋で立ち読みしてきたら、1998年の BK675 は、JF1(日本製)であっても 4S3(アメリカ製)であっても、状態の良い下取り価格で 5,475ドルと書いてあった。今改めて Kelly Blue Book のサイトで調べたら、 3,785ドルとのこと。まあそんなものだろう。しかし 10年落ちで本当に 3,000ドルオーバーの値がつくのだろうか・・・?
なお自動車に動産税を課する州があるが、課税標準はこの相場表だったりするところが面白い。
さてその VIN、title や registration と言った書類に記載されるのは当然としても、車輌側にはどこに記載されているのだろうか? 案外簡単な場所に貼ってある。
こんなんだと簡単に改竄できそうなのだが・・・ もっと偽造不可能な場所にも刻印してあるのだろうか・・・ 日本の車台番号と同じように。
ところで日本の車台番号も、年金と同じように、背番号としては機能していない。車台番号が分かっても所有者の履歴等や、盗難車かどうかの区別はつかない。そもそも唯一無二の番号という風にはなっていない。日本の車台番号は、メーカー内の形式+製造番号となっているから、もし異なるメーカーで同じ形式をつけたら、違うクルマが同じ番号になってしまう。
国民総背番号制も、自動車総背番号制も、それなりにメリットはあるはずだ。犯罪者にはデメリットの方が圧倒的に大きいだろう。住基ネットなどは自分にはメリットの方が大きく感じられるのだが、世の中そういう意見ばかりでもないらしい。難しいものだ。
| 固定リンク



