Logical English?
数字の表記に戸惑うことがよくある。
2つ前の記事で、ハリケーンのカテゴライズを記した。再度引用すると、
Cat 1: 74-95 mph、Cat 2: 96-110 mph、Cat 3: 111-130 mph、Cat 4: 131-155 mph、Cat 5: 155 mph+
である。これ、日本人なら必ず違和感を感じるのではなかろうか? 少なくとも理系の人間には。最大風速 95.6 mph のハリケーンは Cat 1 なのか、Cat 2 なのか、どちらなのだ? と。有効数字の考え方からすれば、96 mph に四捨五入されるので Cat 2 になると思う。が、熱帯低気圧ではなくハリケーンと呼称されるのが 74 mph 以上(= 74 mph 未満なら熱帯低気圧)ということだと考えると、73.9 mph はきっと熱帯低気圧だろう。とすれば、事実上小数点以下は切り捨てということになり、95.6 mph は Cat 1 ということになるだろうか。
ついでに言うと、Cat 1 から Cat 4 までは、下位カテゴリの上限値と上位カテゴリの下限値は、1 ずつ離れているのは上に書いたとおりだが、Cat 4 と Cat 5 の間は事情が違う。上の推測から 156 MPH 未満は Cat 4 だろうと思われるから、Cat 5 の 155+ というのは、事実上「156 MHP 以上」という意味だ。これだけ見ると、155.0 を超えたらというように見えるがそうではない。殆ど驚きに値する。これがもっと精密なカテゴリになっていて、小数点まであったとすると、いったいどう解釈すれば良いのかお手上げである。例えば、こんな場合。"155.0+"。 これだけだと何とも分からない。この一つ手前のカテゴリが "xx - 155.0" となっているのを確認しないと安心して 「155.1以上」という意味だと解釈できない。
Amazon.com で7インチディスプレイのミニノートを調べたら 42 件ヒットしたが、その price range 毎のヒット数は、
$200-$499 (28)
$500-$999 (6)
$1000-$1999 (4)
$2000-$4999 (1)
であった。では 499.99 はどちらに入るのか、と思ってスクロールしてみたら、
MSI Wind 10" Mini Laptop (1.6 GHz Intel Atom Processor, 1 GB RAM, 80 GB Hard Drive, XP Home, 3 Cell Battery) Black
1 Used & new from $499.99
というのがヒットしたので、499.99 は、$200-$499 に含まれていることが分かった。やっぱり 499 というのは、500 未満という意味だ。ハリケーンの推論では、後者が正しいに違いない。
ではアメリカではカテゴライズの表現としてこれが主流かと言うと、必ずしもそうとは言えない。次の例は、筆者から見てかなり違和感の小さい例である。
ZIP code 20817 の、世帯収入別人口構成比(2007)
Income Range Ratio Income Less Than 15K 2.75% Income between 15K and 25K 1.77% Income between 25K and 35K 2.24% Income between 35K and 50K 4.76% Income between 50K and 75K 10.17% Income between 75K and 100K 11.34% Income between 100K and 150K 23.70% Income between 150K and 250K 24.81% Income between 250K and 500K 11.25% Income greater than 500K 7.20%
比較的裕福な層が多いことが分かるが、今回はそれはどうでもよい。Between という単語を用いている。だが厳密に言うと、セント単位まできっちり 50K の人は、"between 35K and 50K" と "50K and 75K" のどちらに分類されるのだろう。従って少々違和感は残る。
日本ならば、次のように記載するのが通常である。
スピード違反の点数と反則金
速度超過の範囲 点数 反則金(円) 15km未満 1 9,000 15km以上 20km未満 1 12,000 20km以上 25km未満 2 15,000 25km以上 30km未満 3 18,000 30km以上 35km未満 3 25,000 35km以上 40km未満 3 35,000
「以上」と「未満」を用いて、どんなに特殊な値が発生しても迷うことなく必ずどこかに分類できる。
このような切り分けの仕方はその他色々な局面で見られる。11:00~12:00 という意味を表すのに 11~11:59 と書く例もある。ちなみに毎正時 00 分の時は、":00" を書かない場合が多い。省略できるものは出来るだけそうしようという基本的な考えでもあるのだろうか。
イベント等の日時の表示に関しては、次のような例も多い。
Saturday, December 6th from 1 – 4 p.m.
"to" が "-" にとって代わられているのである。"-" は通常 "between" の意味を持つのであって、時間の終点を示す "to" の意味を持たない。従って上の表示だと、「1 時から 4 時の間のいずれかの時点から開始される」(= 2 時開始かも知れないし、3 時開始かもしれない)と読めてしまう。しかも 4 時には pm がついているが、1 にはついていない。よって、これが午前 1 時でないとも限らない。まあ普通、そんな時間に始まるイベントなどないから、常識的に 1pm ~ 4pm のことであると推測はできる。しかし "8 - 10" あたりだと、"8am - 10am" なのか、"8pm - 10pm" なのか、はたまた "8am - 10pm" なのか、かなり分からない。イベントの性格やバックグラウンドをかなり良く知っていないと判断がつかない。新聞記事などでは字数を極力少なくしようとするせいか、このような例は非常に多い。日本であれば基本的に 24 時間制を用いるので混乱することはない。
この、12 時間制を用いる習慣は実に徹底していて、列車や飛行機の時刻表まで全て 12 時間制である。アムトラックの時刻表では、"8 40A" だとか "10 45P" などと書いてある。それぞれ意味はお分かりであろう。おまけに、午後の時刻は太字で印字されている。この午後を太字にするのはアムトラックに限ったことでなく、多くのバスや列車の時刻表で採用されている方式である。A とか P とかだけでは間違いやすいからであろうか。それならば 24 時間制にしてしまえば良いのに、と思う。ついでに言うと、"12 15P" という表記は、24時間制で言う 0:15 であろうか、12:15 であろうか? 答えは当然と言えば当然であるが、後者である。何しろ午後だから。が、日本であれば、この時刻を「午後」を使って表現する場合、何と言うだろうか? 「午後 0 時 15 分」と言うのが普通である。こちらの 12 時間制は、そういう意味で典型的な 12 進法になっていない。正当な 12 進法は、0 ~ 11 の 12 個の数字を用いるが、こちらは 12 および 1 ~ 11 という 12 個の数字を用いているのである。
さて、ぴったり正午の場合は何と表現するのだろうか? アムトラックの時刻表では "12 00N" と表示されている。言うまでもなく "noon" の N だ。この一瞬だけ A でも P でもないらしい。とすると深夜零時はどうだろうか。残念ながら手元にある Northeast Corridor の時刻表では、深夜零時が1箇所も出てこない。が、2箇所ほど "11 59P" というのがある。アムトラックの運行なんて1分程度は全く誤差の範囲なので、これは深夜零時の意味だろうと推測する。
なお、公共交通機関の時刻表で 24 時間制を使用しているのは、筆者の知る限り(と言っても日米欧しか知らないが)、驚くことに日本だけである。
アメリカでは 12 時間制であるというのは、PC の上でも実験してみることが出来る。XP や VISTA なら設定が簡単だ。XP なら、コントロールパネルから「地域と言語のオプション」を選び、言語として「英語(米国)」を選ぶと、右下の時刻表示が 15:46 だったものが 3:46 PM に変わる。
さて、上で日本の免許制度におけるスピード違反を記したが、Maryland ではどうだろうか。次のようになっている。
Speeding in excess of the posted speed limit by 10 miles an hour or more 2 points
Speeding in excess of the posted speed limit by 30 miles an hour or more 5 points
Speeding in excess of a posted speed limit of 65 miles an hour by 20 miles an hour or more 5 points
単にこのように書いてあるだけだ。面倒なので現在地の速度制限が 55 MPH だとすれば3行目は無視できる。そこでの 15 MPH の速度超過は 2 点減点であることがわかる。しかし 32 MPH だとどうか。1行目にも2行目にも該当する。2 点なのか 5 点なのか? 当然 5 点ではあるが、それは2行目のどこにも書いていない。「複数に該当した場合は重い方を採る」という条件を補足しているから分かることだが、論理的に言えばこの表現は失格である。また3行目との優先順序も同様である。55 MPH 制限時の 25 MPH オーバーは当然 2 点であるが、65 MPH 制限時の 25 MPH オーバーは 2 点なのか 5 点なのか? この場合も重い方を採る前提を当てはめて 5 点であろう。制限速度が速いときは、30 MPH までオーバーしなくても、早々に 20 MPH オーバーの段階で 5 点とりますよ、ということに違いない。
これは州法であるが、かようにいい加減に出来ているように見える。もっとも別のところに「複数に該当した場合は重い方を採る」と断り書きがしてあるのかも知れない。日本でも「免許不携帯で速度違反」などということはあり得るわけで、「重い方を採る」と書いてあったと思うが、速度の分類にもそれを当てはめ、「○○以上××未満」等と書かないで済ますところは合理主義も行き過ぎのような気がする。
もっとも、英語には「以上」「以下」いう便利な単語がないのも事実である。日本語に「未満」に対応する「~を超えて」という単語がないのと似ているかも知れない。以下にちょっと日米対応をさせてみる。
10 を含まず、10 を超えて:over 10、more than 10 等
10 を含まず、10 未満:under 10、less than 10 等
10 を含み、10 以上:10 or more
10 を含み、10 以下:10 or less
1行目以外は日本語としては「二重の重複」になっているがご勘弁願いたい。「以上」「以下」は1単語では表せないのである。
日本語はその構造上、あいまいさが際立つ言語であり、英語はその逆と一般には言われているし、筆者も間違いなくそうだと思う。が、言語の体系上はそうなのであろうが、数字の取り扱いそのものについては、日本の方がはるかに厳格である。仕事のやり方にしても、こちらでは容易に「そんな細かいことどうでもいいじゃん」となるのに対して日本では「細かいところまできちんとするべき」と考えるのが普通だ。日米間で仕事をするとこうした違いが際立ち、双方でフラストレーションが溜まることが良くあるが、そうした違いが数字の取り扱いにも現れているのかも知れない。
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