Bank
昨日、銀行に行って来た。海外送金をするためだ。
ロビーに入った後の基本的な動作は2種類ある。テラーの列に並ぶか、並ばないか。
こちらのテラーは、日本の銀行と違い、立っている。客の側にもイスはない。よってカウンターを挟んで立話という形になる。テラーが扱うのは、主として現金やチェックのデポジット、現金の払い出しなどの簡単で頻度の高い取引である。テラーの列の脇には日本と同様、用紙と記入台が置いてあり、並んでいる間にそこに記入する。しかし上記の通り、取引はチェックのデポジット等に限られているため、置いてある用紙もデポジットスリップ(入金票)だけである。しかしテラーがデポジットしか取り扱わないなどとはどこにも書いていない。
では定期預金や海外送金、口座開設、住所変更など、上記以外の取引はどうなるか。日本だとローカウンターに案内されると思う。ところがこちらにはローカウンターというものはない。あるのは個室だけである。よって個室に案内されることになるわけだが、ロビーに入り、テラーの列に並ばない動作をすると、フロアの案内係が「今日はどのようなご用件で?」と聞いてくる。「海外送金に来た」などと言うと、「承知しました。お名前は?」と聞かれる。答えると名前と用件・取次時刻をメモして所定の場所に置いておく。客は待合所で雑誌や TV などを見ながら名前を呼ばれるのを待つ。個室はいくつかあって、それぞれ行員が客対応をしているわけだが、前の客の対応が終わった行員が個室から出てきて次のメモを取り、名前を呼ぶ。自分の名前が呼ばれて答えると、「こちらへどうぞ」と個室に案内される。この際、行員によるが「本日担当させていただきます○○です」などと言いながら握手をすることもある。
個室はガラス張りで、またドアを閉めることはない。個室の中にはL字型の机が置いてあり、その一辺が壁に接し、もう一辺が個室の中央を横切るように設置してある。これがカウンターの役目をする。とは言えこのカウンターの長さは部屋の3分の1程度しかないため、あからさまに彼我を隔てている感じはしない。そのカウンターの上にPCが置いてあり、当然だが全ての取引はこの PC を用いて行われる。ちなみにマシンは専用端末ではなく、ごく普通の Win マシンのようだ。ソフトは当然ながら専用ソフトらしい。
不思議なのは、客が手を伸せばキーボードに触れることは出来るし、ちょっと回り込めば画面を覗き込める状況にあることだ。実際ディスプレイをこちらに向けて、取引内容を確認させられることもある。さらに不思議なのは、必要事項を打ち込み終えると「ちょっと失礼します」と言って部屋を後にし、取引記録の出力をプリンタまで取りに行ったりすることである。その間、PC は無人の状態で放置されている。カードリーダなどでキーボードをロックしているようにも見えないが、何か対策がしてあるのだろうか。
さて個室に案内されたあと、いつも必ず腹がたつ質問が発せられる。「今日のご用件は何でしょうか?」である。メモに書いてあるのに、必ず聞かれる。見ないのか、確認のため再質問するマニュアルになっているのか。
これは銀行に限らず、かなり広範な機会で同じことが当てはまる。たとえば医院。
電話で予約を取る段階で当然診療内容を伝える。予約の当日、窓口でまた診療内容を聞かれる。診察室に入るとナースが診療内容を尋ねる。最終的に医者が入ってくると、また診療内容を尋ねる。全く引継ぎがなされていないのか、敢えてやっているのか? 話の逸れついでに、ER。
筆者は幸いにも行ったことがないが、次のような状態であると聞いている。ちょっと風邪をこじらせてER に駆け込むと、まずナースに状態を尋ねられる。ああ良かった、診て貰えるんだと思うと、そのまま3時間待たされる。そうすると助手がやって来る。やっと医者に診て貰えると喜ぶと、また状態を尋ねられて、ではしばらく待てと言われる。さらに待つこと3時間。今度は違う医師が来て、ここで先ほどのは助手であることが分かる。また状態を尋ねられて、「では薬局で Tyrenol でも買って飲んでおけ。今日はこれで終わり」と言われておしまい。
この ER の話は、こちらではトリアージュがきちんと機能していることを如実に示している。ER に来る患者が多すぎるため、重症の患者ほど優先して診療しているのだ。最初のナースと次の助手がそれぞれの時点における重症度を判別しているものと思われる。つまり、長く待たされれば待たされるほど、軽症と診断されているわけだ。喜んだ方がいいかも知れない。
ちなみに ER を訪れる患者がどうしてそれほどまでに多いのか。理由の一つに、医療保険制度の問題がある。こちらは国民皆保険ではない。公的保険としては、低所得者向けの Medicaid、高齢者向けの Medicare があるが、普通の勤労所得者には公的医療保険はない。よって自分で民間の医療保険を選んで加入しなければならないが、この保険料が非常に高い。安い保険を選ぶことも出来るが、当然保障内容も低くなり、保険に入っている意味が薄れたりする。こうした事情で、Medicaid を受給するほど低所得ではないが、かと言って保険に加入できるほど高収入でもないという理由で、無保険状態の国民が 4000 万人ほどいると言われている。通常の医療機関では、初診時に保険のカバー内容を確認するが、無保険であることが分かると治療が拒否される。このため無保険の患者が治療を受けようとすると、ER に駆け込むしか選択がないのである。ER は人命優先のためか、無保険患者を拒否しないからだ。
銀行の個室に戻ろう。ムッとしながらも「海外送金に来た」と言うと、まず ID を見せろと言われる。これは当然なのでムッとしない。自分の口座から海外送金をするのであれば、日本だと通帳と印鑑は必須であるが、こちらではどちらも不要だ。というよりどちらもそもそも存在しない。そのため本人確認は必須なのであろう。では、会社の口座から海外送金をする場合、銀行はどうやってその客が正当な担当者であることを確認するのだろうか? 結論を言うと、どうも確認しているようには見えない。ID を確認し、住所等を記録しているので、事後問題があった場合、その送金をしに来た客を特定できるのでヨシとしているとしか見えない。
ここで銀行が住所等を記録していると書いたが、書くのは住所等だけではない。送金元口座の情報、送金先口座の情報、金額等、すべて銀行側が書いて行く。日本であれば、海外送金ならそれ用の用紙が置いてあって、客が自分で全て書き込む。銀行サイドはそれを受領し、処理情報を記入し、行内で保存すると思うが、こちらではそうではない。全て銀行が書き、客はそれにサインするだけだ。これは恐らく本来客が書くところを銀行が代行しているのだと思う。客に書かせると全然出鱈目な書類になってしまうだろうか? 海外送金以外の取引も、客が記入するのはサインだけだ。そのため日本ならずらりと並んでいる各種用紙が、一切置いてない。全て担当者のデスクの中に置いてあり、取引内容によって担当者が該当する用紙を取り出して記入する。
そうして全て書き終えると、今度はそれを PC に入力していく。ブラインドタッチは当然なので、キーボードを叩くスピードは遅くないのだが、どういうわけか全項目を入力し終わるのに非常に時間がかかる。PC 入力に時間がかかるのはどの場面でもそうだ。Social Security Office でも、Motor Vehicle Association でも全部そうだ。客が書類を書かなくて良いのはいいが、とにかく待ち時間が膨大になる。
海外送金では、非常に驚いたことがいくつかある。スウェーデンに 90,400 クローネ(SEK)を送金しようとしたときのこと。若い行員が、USD で幾ら送るのか? と聞く。
筆者:いや USD ではなく SEK で送りたいんだ。
行員:だからそれは USD で幾らになるのか?
筆者:今日の為替レートなんて知らない。そっちが知ってるはずだ。
行員:俺は知らない。
筆者:俺だって知らない。
行員:それが分からないと送金できない。
筆者:だから、換算した USD 相当額を USD で送るのではなくて SEK のまま送るんだってば。
行員:そんなことは出来ない。
筆者:出来ないはずない。実際何度もここでそれをやっている。
行員:One minute...
と言って席を立ち、誰かに聞きに行った模様。外貨建ての送金は出来ないと信じているようだ。出来ると言われて帰ってきたらしく、今度は PC に向かうが、どこに何を入力したらよいのか分からない模様。今度は受話器をとって、どこかに電話をかけている。電話で操作を聞くつもりらしい。しかし、相手が一向に出ない。こりゃ最低でも 30 分はかかるなと思っていると、同僚がランチを買って帰って来たらしく、この個室の前を通りかかった。Peter, Peter! と呼びかけると同僚が入って来た。Peter は用件を聞くとあっさり問題を解決。やれやれ 15 分で済んだわい。Peter がこの無能な行員に教えていた通り、通貨として SEK を選択し、値に 90,400 を入力すればその日のレートで USD が自動入力されることになっているくらい筆者でも想像がつく。ちなみにスウェーデンからの請求書には、"SEK 90.400,00" と書いてある。ヨーロッパと日米ではカンマとピリオドの使い方が逆なのである。この無能な行員がこの数値を見て正しく "90,400.00" と判断できるかヒヤヒヤものだったが、これは杞憂に終わった。
ところで、ヨーロッパ向けの送金では送金先口座番号としては IBAN 番号を使うのが常識である。IBAN 番号は、国名・銀行名・支店名・口座番号を全部数値化した番号で、やや長いがこれさえあれば銀行名をタイプミスすることもない。実際にはIBAN 番号が不明でも銀行名・支店名・口座番号等が分かれば送金は出来る(事実昔はそうだった)のだが、アメリカの銀行でも「IBAN 番号がないと送金できない」と拒否されるケースがある。気持も分からなくはない。が、この無能な行員は逆だった。IBAN を良く理解していないらしく、せっかく IBAN 情報が分かっているのに、それを無視。「あの~、IBAN 情報はここにあるんだけど」と言うと、彼は「いや、SWIFT コード+口座番号」でないとダメだと時代遅れも甚だしいことを平気で言う。ま、それでも送れるからいいけどさ、タイプミスしないでよ?
さて外貨建ての送金なら、例えば上の SEK 90,400 が最終的に今日のレートで USD いくらになったのか、送金手数料がいくらだったのか、またこの取引によって口座残高が幾らになったのか等の計算書が出てくるのが普通と思うのだが、こちらではどうやらそうではないらしい。全部入力が終わると、画面のハードコピーをとっているようだが、その段階で、"Now we are ready. Thank you. Have a great day." と言われてしまう。計算書は出ないのか? と聞くと、「出ない。」 じゃあ、最終的にドルで幾らだったのか? と聞くと、紙切れにメモを書いて寄越すだけ。うーむ、信じられない。
全くアメリカの銀行ってのは信じられないことばかりだ。ATM でのデポジットも、チェックをまとめて封筒に入れ、ATM の挿入口に入れる。では金額はどうするのか? 客がテンキーで入力するのだ。実際の金額と違う金額だって入力出来る。この場合あとでモメるのだろう。うーん、超ローテクな話だ。
なお筆者のメインバンクでは 2006 年から新 ATM が導入され、チェックは封筒に入れず、一枚一枚挿入口に入れるようになった。ATM は自動的に金額を読み取り、「1,234.56 ドルで OK か?」と聞いてくる。筆者はここで読み取りミスを経験したことがないのだが、これは逆にとんでもなくすごいことだと思う。何故ならばチェックの仕様は各人全く好きに選べる上に、字体だって人によって全然違うからだ。日本の郵便の宛名読み取り能力も凄いようで、これと同等と言えばそうなのだが、従来とのギャップが凄すぎる。Deposit has never been as such easy. とか何とか売物にしているようだ。
信じられないついでにもう一つ。現金引き出しについてだが、筆者のメインバンクでは、自行の支店・ATM で引き出す限り、休日・夜間とも手数料ゼロである。が、他行で引き落とすと、自行側で2ドル程度、他行側でも利用料として2~3ドル程度引き落とされる。ちょっと 20 ドルだけ欲しいような時には泣きたくなるような手数料である。
まだある。口座を作ると当然キャッシュカードが作られて、これがデビットカードにもなるのは驚くに当たらないが、このカードの表面に書かれているのはカードの番号であって口座番号ではない。このためカードを持ち歩いていても自分の口座番号は分からない。口座番号が書いてあるのはチェックなり毎月の statement だ。口座番号が必要となるような手続きをするときは要注意である。
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