American System of Units
前々から感じていたことだが、メートル法に慣れた人間からすると、アメリカの単位系は非常に分かりづらいものがある。1 mile ≒ 1.6 km だの、1 inch = 2.54 cm だの、1 foot ≒ 30cm だの、1 yard ≒ 90 cm だのということは良く知られたことであるし、毎日接する単位であるので、このくらいの単位であれば、すらすら「だいたい2インチくらい」などと表現できるほど、違和感はなくなっている。筆者はゴルフをやらないが、ヤードに違和感を持たない人も多かろう。車を運転していればイヤでもマイルには慣れる。目的地まで 80 マイルであれば、時速 60 マイルで走って 80 分という計算が即座に出来る。むしろ下手に km で表現されるとマイルに換算しなおしたりする。
oz、lb、fl.oz、pint、gal などの単位も主として食生活を中心に毎日接するのでこれも既に違和感はない。肉屋で「○○を half pound」などと注文できる。肉や魚介類、また量り売りのデリやチーズ、ハムなどの単価表示は「ポンドあたりいくら」となっている。しかしこれらのものをオーダーしたり、既にパックされた切り身等の重量は、1 lb 3 oz などと表現しない。1.36 lb などのようにポンドのみで表現される。これは当然で、$9.99/lb のサーロインは 1.36 lb の切り身で 1.36 x 9.99 = 13.58 ドルであると容易に計算できるからだ。もし 1 lb 3 oz と表現すると、(1 + 3 / 16) x 9.99 と計算することになり、ちょっと暗算できない。
単位系自体は 16 進法やら 12 進法になっているのに、都合に応じて 10 進法を取り入れるところが何ともおかしい。量り売りを注文するときも、5 oz くれなどとは絶対に言わない。必ず lb 単位だ。Lb 以下の単位は oz を用いず、half pound、quarter pound を用いる。1/8 pound というのは見たことがない。実際 quarter pound は、だいたい 100g と思えば良いので、これより小さい単位は通常必要ない。
容積も同様で、牛乳のパックは通常 1 gal で売られているが、それより小さいものは 1/2 gal、1/4 gal などである。1/4 gal のパックは、ほぼ日本の 1 L パックと同等に見える。缶ビールは 12 fl.oz. 入りが最も普及しているが、16 fl.oz. も多い。16 fl.oz. は 1 pint = 1/8 gal であるが、16 fl.oz. の代わりにこれらの表現を用いることはない。ガソリンの単価は当然 gal 単位で表現される。しかし、実際のガソリンポンプは、gal 以下の単位を用いない。満タンで 12.567 gal などと表示される。理由はサーロインと同様であろう。
このあたりまではまだ良い。しかし、これら単位同士を掛けたり割ったりするともう既に実感がわかなくなる。例えば燃費。筆者の車の燃費は街乗りで 24 MPG、高速で 30 MPG くらいであるが、この数字、ピンと来るであろうか。MPG は、mile per galon の略である。燃費のことを mileage と呼ぶこともあるが、MPG と言う方が多いように思う。車に関する話題では、タイヤの空気圧が難しい。筆者の車の適正空気圧はだいたい 31 lb/in2 である。日本では 2.2 kg/cm2 を目安にしていたが、これを lb/in2 に換算するためには、2.2 / 0.45 x 2.542 という計算をする。流石に2乗が入ってくるととても暗算では無理だ。
同じ空気圧でも、天気の場合は水銀柱を用いる。1気圧は 760 mmHg であるが、この mm の部分がインチに置き換わる。よって1気圧は 24.93 inHg である。Bethesda の現在の気圧は、"30.48 in and rising" となっている。
天気関係では風速が面白い。Bethesda の現在の風向・風速は "WNW 17 mph" とのことである。風速の単位として日本では通常 m/s を用い、こちらは車の速度と同様 mph を用いるが、風速に関してはこちらの方が合理的のように思う。長年 m/s で暮らして来たので、最大風速 45 m/s の台風と言われれば、相当大変台風だと分かるが、それが実際 km/h にするとどれくらいになるのか直観では分からない。計算してみると、45 / 1000 x 3600 = 162 km/h となり、無謀運転の車と同じくらいということになる。こちらのハリケーンの category は、風速で定められており、Cat 1: 74-95 mph、Cat 2: 96-110 mph、Cat 3: 111-130 mph、Cat 4: 131-155 mph、Cat 5: 155 mph+ となっている。Hurricane Katrina の Louisiana 上陸時の風速は 125 mph で Cat 3 であった。これを日本式に換算すると、約 56 m/s である。たしかにとてつもない規模である。
車に戻ると、ボルトナットが悩ましい。日本なら直径 6 mm のボルトの頭部は 10 mm で「トオミリのメガネ」などを用いるが、こちらの単位は当然インチである。しかしインチ以下の単位はない。かと言って 0.3 in という表現をするわけでもない。どうするかと言うと、まず 1/2 を用い、それで足りなければ 1/4 を用い、以下 1/8、1/16、1/32 を用いる。10 mm のナットに近いのは 3/8 in のナットであろう。しかし筆者の車は日本車であるので、ボルトナット類はすべてメートル法である。ヨーロッパ車もそうに違いない。修理工場は双方を揃えておく必要があり、面倒なことだろう。
ところで慣れるのに難しくない距離の単位に関してであるが、12 in で 1 ft、3 ft で 1 yd まではまあ良い。しかしその次が??? なのである。1 mi は 1,760 yd なのだ。フィートで言えば 5,280 ft だ。この 1,760 という数字、12 や 16 の倍数かと言うと、確かに 16 の倍数ではある。が、16 の 110 倍なのである。ここで 11 という妙な約数が出てくるのが解せない。
調べてみると、mi は in・ft・yd とは全く別の出自を持っていることが分かった。以下は日本語版ウィキペディアの引用である。
古代ローマには、2 歩(片方の足を踏み出してから次に同じ足を踏み出すまで)分の長さに相当する "passus" という単位があった。これの 1,000 倍の "mille passus" がマイルの由来とされている。1 passusは 5 フィートだったので(ただしこのフィートは現在のものより短い。現在のフィートでは約 4.83 フィートとなる)、1 マイルは 5,000 フィートとなる。1593 年、エリザベス 1 世によって、1 マイルは 8 ハロン(5,280 フィート)と定められた。
古代ローマ時代の 1 マイルは、概ね 1,480 m だったらしい。それが今より短い当時のフィートで 5,000 ft だったという話である(逆算すると当時の 1 フィートは、約 29.6cm ということになる)。その後マイルとフィートは別々に変化した結果、1593 年に1マイルを 5,280 フィートと「決め」たという話である。単に「決め」の問題なのであれば、5,281 フィートでも 5,290 フィートでも良かったのだろうが、とにかくそう決めた。その結果、11 という変な約数を持つ倍数になってしまったということらしい。
さて1次元の話をしたら、2次元の話もせねばなるまい。こちらで住宅やオフィスの面積などを表すのは sq.ft. である。なぜか余り ft2 とは書かないようだ。筆者の住んでいる部屋は 1BR(1 Bed Room)で 740 sq.ft. である。当初、これを図面で見たとき、広いのか狭いのか面食らってしまう。が、何のことはない。ざっくりと 1 ft を 0.3 m とすれば、1 sq.ft. は 0.09 m2 である。ということは 筆者の部屋は 67 m2 ということになる。電卓が手元にない場合は、0.1 を掛ければそれほどはずれない。これは慣れればなんということはない。が、大きな家の敷地面積となると、sq.ft. は用いない。Acre を使う。
PA の知合の家の敷地面積は 17 acre だそうだ。AZ の知合の家の敷地面積は 2 acre だそうだ。こう聞いていまだにピンとこない。昨晩 acre というのがどういう単位か調べてみてまた??? となった。1 acre は、4,840 sq.yd.、フィートで言うと 43,560 sq.ft だと言うのである。4,840 は、12 でも 16 でも割り切れない。ちなみに 11 では割り切れる。ということはマイルと関係がありそうだが、一体どこから来たのであろうか。以下はまたウィキペディアの抜粋である。
エーカー(acre)という名前は、ギリシャ語で牛の軛(くびき)を意味する言葉に由来する。そこから、「雄牛 2 頭引きの犂を使って 1 人が 1 日に耕すことのできる面積」としてエーカーという単位が作られた。
1277 年、イギリスのエドワード 1 世が、「4 ロッド × 40 ロッドの土地の面積」を 1 エーカーと定めた。この定義は「法定エーカー」と呼ばれる。1 ロッドは 5.5 ヤード、16.5 フィートであるので、1 エーカーは 4,840 平方ヤード、43,560 平方フィートとなる。これは今日の定義と同じである。なお、4 ロッドをチェーン、40 ロッドをハロンという。1 ロッド×1 ハロンの面積をルードというので、1 エーカーは 4 ルードとなる。
なるほど。これも「決め」の問題だったわけだ。ちなみに「4 ロッド × 40 ロッドの土地」をヤードで表すと「22 ヤード x 220 ヤードの土地」ということになる。また 11 という約数が出てくるが当然である。長方形の長い方の辺は 220 ヤードであるわけだが、これは上に書いてあるとおり 1 ハロン = 1/8 マイルだからだ。そして短辺はその 1/10 という風になっているからである。ということは、square mile という単位を持ってくるとすると、1 square mile = 640 acre ということになる。MD 州の面積は、12,407 sq mi だそうだ。これをメートル法に直すと 32,133 km2 である。ちなみに東京都の面積は 2,187 km2 であるから、全米で 9 番目に小さい州である MD でも、東京の 15 倍程度広いということになる。
ところで、上の PA の知合の家の敷地面積をメートル法に直すとだいたい 69,000 m2 ということになる。東京ドームのグラウンド面積が 13,000 m2 とのことだから、それの5倍少々ということになる・・・
今度は逆に小さい方の話。重量の最小単位は oz、容積の最小単位は fl.oz. である。前者を g で、また後者を ml で表すと、微妙に異なるがどちらも大体 30 近くの値となる。そうすると、1 g とか 5 ml とかの小さい量を表すのに、随分具合が悪くないだろうか。そう思って、食品や薬品などを調べてみた。食品では実際の入れ目がそんなに小さい製品はなかなかないが、イーストを見たら1袋 "1/3 oz" 入りだった。栄養成分表示の欄を見ると、"serving size" という欄がある。一人1食何 oz になるか、というものであるが、油やマスタード、ソースなど、1 tsp や 1 tbsp などとなっているものが多い。ここで 1 tsp (3 g)とか 1 tbsp (17 ml)などと表示されているものが圧倒的で、括弧の中が oz 表示になっているものはなかった。つまり、これくらい小さい量になると、メートル法がかなり浸透しているようである。
目薬の容器などは微妙であった。0.85 fl.oz.(25 ml)というものもあり、1/2 fl.oz. (15 ml)というものもあった。前者はメートル法で設計してオンスに換算していると思われる。後者はその逆であろうか。前者がヨーロッパの製薬会社の製品で、後者がアメリカの製薬会社製だったりすると面白い。
さらにもっと小さい量になると、これはもうメートル法しか見つからない。医薬品の有効成分の配合量などはどれをとっても mg 表示である。科学の世界は万国共通でメートル法だからであろう。いかなアメリカでも重力加速度の単位は m/s2 であろう。yd/s2 ではないと思う。エネルギーの単位 cal は CGS 単位系でも SI でもないが、1 g の水の温度を 1 度上昇させるのに必要なエネルギー量を言うわけであって、前者はメートル法、後者は摂氏である。そうするとアメリカでは科学をやるのにいちいち換算するのだろう。
Q1:100 ヤードの高さから上向きに初速度 30 MPH で打ち上げたボールは、何秒後に地上に落下するか。
Q2:水温 60 °F の水を 85 °F にするには何カロリー必要か
御苦労なことである(Q2は例題としては適切ではないが)。
科学ついでに、有効数字という考え方がある。同じ "1" でも "1" と書くのと "1.0" と書くのでは意味が違う。前者は 0.1 の位を四捨五入して 1 になる範囲、即ち 0.5 以上 1.5 未満の範囲を指す。後者は 0.01 の位を四捨五入して 1.0 になる範囲、即ち 0.95 以上 1.05 未満の範囲を指す。
さてここに 1 oz. 入りのソースがある。1 oz は 28.35 g であるから、これをグラム表示すると言うまでもなく 28.35 g である。これを良く 1 oz. (28.4 g)などと表示する。が、前者は有効数字1ケタなのに対して後者は3ケタである。数字の精度が全く違うのにそう書く。已むを得ないのだが気持ち悪い。気持ち悪いが已むを得ない。
また、こちらでは単位未満の値を表す方法として 1/2、1/4、1/8、1/16・・とすることが多いと書いた。フリーウェイでは Next exit 1 mile と来ると次に next exit 1/2 mile、さらに next exit 1/4 mile などと表示されている。これは良く分かる。
しかしこれを 0.5、0.25、0.125・・・と表現することもある。これはやはり気持が悪い。これでは分割すればするほど有効数字が増え、精度が増すことになる。もともとの考え方は、1を半分、さらに半分・・・というわけだ。よって半分にするときの誤差が、例えば ±10 %なのであれば、その次に半分にするときの誤差も±10 %であろう。具体的に言うと、1を半分にしたときの結果が 0.50 ±0.05 となるとしよう。であれば、その次に半分にしたときは 0.25 ±0.025 になるはずで、誤差の絶対量は前回の半分にしかならない。これを、0.5、0.25 と表示したのでは誤差の絶対量が 1/10 になってしまう。0.125 だと 1/100 だ。そんなわけはない。これはとっても気持ち悪いのである。
素直に 1/2、1/4・・・ と書いて欲しいものである。
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