Washingtonian
New Yorker という単語は日本にいても良く聞く単語である。"-er" という接尾辞は通常動詞について、「~する人」という意味に用いられるのは言うまでもない。Work について worker、run について runner などである。が、New Yorker の場合は地名である固有名詞 New York について「~住人」という意味になる。
ここで New York とは、Wikipedia によると、NY 州を指す場合と NY City を指す場合があると書いてあるが、日本的理解では NYC と理解されるものと思う。
同じ NY 州でも NYC とエリー湖に面した田舎町では全くイメージが違うのは言うまでもない。また同じ NYC でも Manhattan と Queens ではまたイメージが全く異なる。日本的理解では New Yorker と言えば Manhattan をイメージするし、もっと言えば Midtown をイメージするだろう。さらに限定すれば、概ね Park Ave と 7th Ave の間あたりをイメージするのではないか。あるいは、SOHO なども NY らしいかもしれないし、人によっては East Village を想像するかも知れない。Wall St も然り。Upper West や Harlem はどうだろうか。
しかしとにかく、Wikipedia によれば、英語ではそこまで細かく分類してイメージしないらしい。
ここでは New York City または Manhattan の住人と解釈することにするが、とすると New Yorker とは単に「New York に住む人」というより、「New York に住む都会人」というようなニュアンスを帯びていると思う。「東京人」というとどうだろうか。New Yorker に近いニュアンスが感じられる気がするが、この場合の「東京」も、東京のどこを指すだろうか。少なくとも檜原村は指すまい。山手線の内側などという言い方もあるが、23区内あたりがコンセンサスを得やすいところだろう。が、ひとくちに23区と言っても練馬区と港区では・・・
一方で「関西人」というとどうだろうか。「あーあいつ関西人だからなー」と言った場合に込められている印象は・・・ さらに一方、「関東人」という単語はあまり聞いたことがないが、敢えて書いてみると、なんだか田舎者とか無教養とか言う響きが感じられるのは私だけだろうか。「あーあいつ関東人だからなー」
都市名に接尾辞が付く例は、英語以外にもある。日本で誰でも知っているのが Parisien。「~住人」という意味で理解されてはいるとも言い切れないが、Frankfurter や Hamburger、Wiener などもある。英語に戻るが犬の種類で Pekinese というのもある。
都市ではなく地域に接尾辞が付く例もある。恐らくあまり知られていないが、「~の」とか「~住人」という意味の英語で、Hong Konese とか Taiwanese という言い方がある。
都市・地域でなく国のレベルまで行くと、接尾辞がついた形容詞型は必ず存在すると言って良い(一部国名以外も含む)。
Japan → Japanese
Korea → Korean
China → Chinese
Philippine → Philipino
England → English
America → American
India → Indian
Indonesia → Indonesian
Viet Nam → Viet Namese
Spain → Spanish
Brasil → Brasilian
Morocco → Morrocan
Peru → Peruvian
Salvador → Salvadoran
Malaysia → Malaysian
接尾辞としては "-ese"、"-an"、"-ish" などが一般的である。国名では例が少ないが冒頭に挙げた "-er" も同様の働きをしている。
さて都市名に戻って、都市名に接尾辞が付く例は、日本では上に掲げた例くらいしか通常お目にかかることはない。しかし、2年前に Bethesda, MD に越して来て、Washingtonian という単語があることを知った。形容詞型であるが、どちらかと言うと「DC の」というより「DC 住人」という意味である。同名の雑誌もある。東京 Walker のようなものである。Washington DC くらい大きな(というか特徴のある)市だと、形容詞型が存在するのかと知って驚いたものである。ところが、暫くして自分の住む Bethesda にも Bethesdan なる形容詞型が存在することを知ってたいへん驚いた。さらに Chicago には Chicagoan、Boston には Bostonian なる形容詞型が存在することも分かった。Maryland に対する Marylander や Kansas に対する Kansan もある。こうなってくると、地名なら何でも形容詞型が存在する(というか作れる)のではないかと思ってちょっと調べてみた。
「あまり使われないけれども、全くないこともない」という程度(google で 200 ヒットレベル)までをアリにすると、
Seattlean、Philladelphian、Los Angelesian、San Franciscan、Houstonian、Baltimorer などは発見できた。しかし都市名に関するこの手の形容詞型はどちらかと言えば一般的ではないようで、例えば隣の市の Rockville の形容詞型は発見できなかった。Rockvillian という単語はあったが、Rockville の形容詞型として用いられているのではないようであった。
州名ではどうかと言うと、Virginian や Pennsylvanian という単語はあるが、Delaware や New Jersey についてはお手上げと言ったところだろうか。Alaskan Salmon とは言うが、メーン州のロブスターは Maine Lobster としか言わない。バージニアのワインは Virginian Wine と言いそうだが実際は Virginia Wine としか言わない。そう言えば New York Strip Steak は New Yorker -- とは言わない。
はっきり分からないが、都市名の形容詞型は、主として「~住人」という意味になる場合が多く、従って形容詞的には用いられにくいようだ。国名の形容詞型は、「~住人」という意味の他に「~の」「~語」というような意味にごく普通に用いられるのは言うまでもない。その間の州名だと微妙で、形容詞型が形容詞としても用いられる場合と「~住人」という意味にしか用いられない場合があるように見える。この辺の使い分けに規則性があるようには見えない。
あらためて意識して見ると、なかなか面白い発見であった。
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